今日は阪神淡路大震災から30年の日、被災者には節目などあろうはずはありません。
この震災に対する思いは、例えば100人いれば、それぞれの異なる100人の物語があるはずです。
垂水区で被災したけれども、我が家の被害など軽微な部類で、今日は静かに過ごそうと思います。
さて、同じ著者の『東京の台所』シリーズの2冊目を読んだ。これも図書館に予約して自分の番になるのに9カ月以上かかりました。前回の比べて、タイトルが暗示するように気楽に読めるような内容ではありません。
例によって、出版社の案内を引用します。
何も失っていない人などいない。台所から人生の愛おしさを描く感動ノンフィクション!
「こんなに悲しくても料理だけはやると落ち着くんだよね。作ったら食べなきゃだし、ちゃんとお腹がすく」
家族、恋人、夢、健康――大切なものを失いながら、それでもみんな立ち上がり、今日もごはんを作っている。
本書は、台所と食を通じて人生を立て直した人々を描くノンフィクションです。ネグレクトの親から離れ上京した学生、重いアレルギーを持つ子を育てる母、解体寸前の名建築で暮らす女性たち等々......22人の〈喪失と再生〉の物語を収録しています。
「食のプロの台所」の章では、料理家・小堀紀代美さん、フードライター・白央篤司さんも登場するほか、台所から時代の変化を読み解く「台所クロニクル」「台所小論」、取材で出会ったユニークな収納の工夫を写真とともに紹介した「収納宇宙」など、読み応え十分。
台所を通じて見える、いや隠れている、それぞれの人生を著者・大平一枝さんの目を通して綴った物語です。
著者は、'おわりに'で本書の制作の経緯を次のように語っています。
10年の取材を振り返り、「何も失ったことなどない人などいない」ということに気づいた。小さなものから大きなものまで。大切なものや大切な人、共に暮らした日々、故郷、夢、家族、健康。どんなに幸せそうに見える人でも、何かを失いながら、どうにかこうにか自分を納め、繕いながら生きている。いくつになっても、どんな人にも大小の喪失がある。それが人生だとしたら、喪失と再出発の物語は、読者にも自分にも学びがあるのでは。そんなところから本書の制作は始まった。
一読をおススメします。
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