彦六鮓

もう随分昔のことになるが、阪急六甲を拠点に仕事をしていた時期がある。
今日は、どの店で昼ごはんを取ろうかと、探検することが少なくなかった。
路地裏の民家らしき建物で営業している寿司屋があることを知るのに時間はかからなかった。
「彦六」という店であるが、女主人が寿司を握っていることで界隈ではその名が知られていた。






素朴な店の構え、店内は決して広くはなく、すし飯は昔ながらの伝統を守り、薪で焚き上げていた。かまどで炊いたと言うことだけで、旨いと感じるのだが実際そうだった。
女主人の醸し出す家庭的な雰囲気に魅せられて通う客が少なくなかった。
震災後のことが気がかりであった。






ある時、神戸新聞の木曜夕刊に連載された成田一徹さんの「神戸の残り香」に登場した。
その記事を見て、安堵したのは言うまでもない。
まだ元気に寿司を握っていることがわかった。

先日、この寿司店の近くの「とんかつみやま」まで行ったついでにカメラに収めてきた。

女将さんは、当時五十代半ばだったので、もう七十近くになるのではないだろうか。
そう思えば、行ける時には行っておきたい店の一つである。
夕方からの営業であろうから、今度時間を作ってぜひとも行きたい。
あの小路を通って、十数年ぶりに、あの時と同じように家族でまた行ってみたい。

「筆者注」

営業時間:12:00-14:00 17:00-22:00
定休日:金曜日