『神戸ものがたり』(陳舜臣著、神戸新聞総合出版センター2017発行)を読む

陳舜臣さんの『神戸ものがたり』(神戸新聞総合出版センター2017発行)を読んだ。

「神戸角打ち巡礼」の取材を一緒にやっていたサンテレビの福田晃一さんから、社屋がポートアイランドから神戸駅前に移転するのを機会に蔵書を処分するのだが、要る本があればあげますと聞いて譲ってもらった何冊かのうちの一冊でした。

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長いこと積読でしたが、この夏休みを利用して読んだと言う次第です。

本のオビ文から引用します。

ミステリー、歴史小説に多くの傑作を残した直木賞作家・陳舜臣(1924~2015)。小説以外での初の作品が、生まれ育った街への思いを歴史紀行風に綴った『神戸というまち』(1965)でした。後に『神戸ものがたり』として改訂を重ね、読み継がれてきたこの名エッセイ集が、神戸開港150年の節目の年に新しく蘇りました。併せて、神戸新聞2010年~11年連載の「わが心の自叙伝」を単行本初収録。

さらに目次の一部を紹介します。

神戸ものがたり(まえがき/新しい土地/金星台から/異人館地帯/南北の道 ほか)/わが心の自叙伝(少数派ー台湾での情景鮮明に/作家としての原点ー子供心に抱いた混乱、疑問/神戸校のころー大家族と友人に囲まれて/三色の家ー船と港を眺め、夢見た海外/祖父のことーフィクションに生きた気質 ほか)

神戸に長く住んでいる方なら、このエッセイに登場する場所や人物や物事には思い出がつまっているはずで共感することもしばしばです。
この本の出版当時、神戸新聞論説委員長だった三上喜美男さんは、あとがきでこう記しています。

神戸は開港以来、海外の文化を取り入れ、次々に新しいものを生み出してきた。開港以来の歩みはおおむね登り坂。高度成長期に開港100年を迎え、1981年には「神戸ポートピア博覧会」を成功させる。そのころまではひたむきな未来志向でよかったが、陳さんはこう述べている。「このあたりで、ふりむいてみる必要もあるのではなかろうか」。陳さんが望んだのは、坂を駆け上がる走力の強化ではなく、人々が生活をゆったりと楽しめる「成熟都市」の未来図ではなかったか。それにしても驚くのは本の内容が今もまったく色あせていないことだ。時を超えて生き続けるこの本こそ「フェニックス」と呼べるのではないか。

私は東京と大阪という日本の二大都市で暮らした経験もありますが、一番長く住んでいるのは「神戸」で、他の都市に住もうとは思いません。わが街と呼べるのはやはり神戸です。コンパクトな都市「神戸」の魅力はこの本に余すところなく書かれていますので、本書で確認していただくとして、人口減少が続く神戸の将来を危惧する報道に接することもあります。

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これといった外国人向けの観光資源があるわけでもなく、インバウンドでは後塵を排してもいいではないか。本書の「あとがき」にあるように、神戸の未来は、人々が生活をゆったりと楽しめる「成熟都市」こそふさわしいと思うのです。