思い出の「YELLOW PAGES KOBE-CITY 1985」

まだインターネットの存在も知られていない頃、パソコン通信がやっと登場して、その黎明期であったころの話である。
1970年から80年にかけて発行された神戸に関する情報誌のいくつかが筆者の手元にある。
その中の1冊の本の編集にメインで関っていたYさんと20年の歳月を経て巡り会うという奇跡が起こった。それもインターネットなかりせばあり得ないことだった。






写真は左から今はなき日東館書林が1970年(昭和45年)に発行した「ナイト・イン・コウベ」、1985年版の「YELLOW PAGES KOBE-CITY 1985」、神戸新聞出版センターが1976年に発行した「ワンダフル・コウベ」である。
今日取り上げたいのはYさんが編集者として取り組んでいた真中の「YELLOW PAGES KOBE-CITY 1985」である。

初版が1977年に出て、1988年に閉刊になるまで10年もの間、市民生活のための情報が凝縮された珠玉の一冊として光輝いていたと思う。
主なコンテンツは観光や鉄道案内、タクシー、交通マップなどの神戸市全図、海外料理やバラエティ、デザート、などのEAT、役所や銀行、学校、病院、航空会社、バス、旅行案内などのお助けTelephoneなどなどであった。

記憶では初版が出た当時、小学生だったので、この種の本を持っているわけもなく、手にしたのは1985年版であった。






今でこそ、インターネットに接続すれば、あらゆる情報が質の程度を問う事もなく、一瞬にして手に入る。
1970年から80年代において、米国のYellow Pagesに倣ったとは言えこの冊子は異端で画期的であった。
巻頭の「ご使用にあたっての注意書」がまたすばらしいではないか。

店探しの折は・・・、後は動物的カンで店を発見する努力をしてください。

静かにご利用下さい。穴場を他言すると・・・以外の雑誌社が聞きつけ2ページグラビアと言うことになりかねません。結局は客が押しかけ味が落ち店が変質したり、つぶれることになります。

今でも言い得て妙である。筆者が店の所在地をほとんど掲載しないのも同じ理由による。自分の足で検証するだけの努力はして欲しい。
実際のところ広告で成り立っている商業的なグルメ情報誌を思い浮かべて欲しい。
雑誌に掲載した記事をムックに二度使いしている例が少なくない。記事も写真も同じであるのは言うまでもない。一回の取材で二度美味しいのである。
筆者のホームページに掲載した情報もある情報会社に無断使用された苦い経験がある。
池波正太郎の随筆の中で彼の恩師である長谷川伸の次の言葉があります。
「新しいものは古いものからしか生まれてこない」
商業誌やメディアに関る方も、「YELLOW PAGES KOBE-CITY」の取材や編集方針に見習うべきところは少なくないと思う。






文字が小さくてわかりにくいが、店名、所在地、電話番号に数行のコメント。
情報としては必要にして十分、書籍単価を上げるだけのカラー写真など余計である。
このページに掲載になっていて、今も営業している店は本当の名店でしょう。






この冊子を出した出版社は時代の波とともに消えてしまったと言う。
「YELLOW PAGES KOBE-CITY」は筆者の食の歴史において影響を与えてくれた数少ない本の一つであった、いや今なおあり続けている。
インターネットで得られる良質な情報は極めて少ない。夢かも知れないがいつか「復刻版」が登場することを願って止まない。

最後に奥付けのページを掲載して、編集に関った方々に敬意を表したい。