ええとこええとこ新開地の喫茶エデンの近くに
おでんで名高い「高田屋京店」がある。
昭和6(1931)年の創業と聞く。
今年で67年目を迎える老舗の味を守るのは
二代目である鈴木一男さん。
店内のメニューの短冊が目を引く。
一体どれくらいのメニューがあるのか
誰か数えて教えてください。
名物おでんの出汁には醤油は一切使っていないという。
また出汁は注ぎ足していく。
「子供を育てるように、目を配り、気を配って
味を守っています」
この言葉通リ、鈴木さんは赤銅製おでん鍋の前に頻繁に現れ、出汁の状態をチェックする。
新開地には、時代の流れとは無縁だ。
当たり前のことを当たり前に続けてきた、職人さんたちがまだまだいる。大八食堂のご主人や高田屋の鈴木さんのように。これは嬉しいことである。
お昼の定食は、おでん、いわしフライ、魚フライ、とりからあげとあって、どれも600円。
名物おでん定食を注文し、ロールキャベツを混ぜてもらった。
高田屋のおでんはどれも大きく、「げんこつおでん」と言われるほどだ。
大根には白味噌だれ、ロールキャベツにはケチャップソースと手間を惜しまずにかける。
口に入れてみれば、鰹の利いた出汁がじゅわっと広がって実に旨い。
昼間から飲んでいる人も結構いて、熱燗をもらった。今は無き金盃のとっくりにガラス製の猪口が粋だ。
おでん定食はボリュームがあって、お腹も膨れ、大満足であった。
おでんは二十種以上あって、100円からと庶民の懐にやさしい。
帰りがけにカウンターから奥を見れば、金ぴかのレジスターが目に付く。
いやあ、すごい代物だ。
これを見れば、何も三宮・元町や北野だけがお洒落なのではない。そのルーツは案外と新開地にあるのじゃないかと思う。
まあ、とにかく最近は「B面の神戸」とも呼ばれる気さくな街「新開地」でその魅力に浸ってみませんか。