ここは長田の本町商店街、
肉の名門マルヨネがある。
かねて訪れたいと思っていたお好み焼きハルナ、
商店街に通じる路地にあった。
地元密着の店はなぜか、本通りには面していない。
だからこそ昭和23年の創業から半世紀以上経っても残っているのだろう。
半円形の暖簾に昭和のモダニズムを感じる。
焼き担当の女将さんの他、おばあちゃんも元気に店に出ておられる。まるで稲荷市場の「ひかり」のようだ。
豚焼き1枚450円から高いものでもチャンポンうどん・そば焼きの780円と下町価格である。
お好み焼き発祥の地は大阪とも広島とも言われるが、長田も有力候補かもしれない。
インターネット電話帳で調べてみると長田区にお好み焼き屋が78件がヒットする。個人名義の電話もあるから、店舗数はもっと増えるはず。
ハルナは長田らしいお好み焼き屋で、一枚の鉄板を客が囲むスタイルだ。よって、5,6人も座れば満席となる。このスタイルは「みずはら」でも見られるが、もう残っているのは数軒だけかも知れない。
ボリューム感のある「モダン焼き」が殊のほか好きなので、これを注文。
まず鉄板の上に水で溶いた小麦粉の生地をひく。その上にキャベツ、そば、豚肉などの具材を乗せる。最後にまた生地を乗せるやり方だ。油も「肉の脂」の塊を使う豪快な焼き方だ。脂は豚なのか牛なのか、おばちゃんに「豚の脂やね」と聞いたが否定しなかったところを見れば豚か。
「みずはら」のマスターに教えてもらったことがある。
「三宮から向こうは、みな混ぜるでしょう。長田は混ぜないから違うねん。これが長田焼きなんや」
ハルナも、まさにその長田焼きだった。
綺麗に焼き上がった。
ソースは、長田に一軒だけ残った庄田町にある地ソース「ばら食品」だ。
ここでは箸ではなく、テコで直接口に運んで食べる。
これが熱々でなんとも言えずいいなあ。
ひとつ難点を言えば、ビールなどアルコール飲料がない点。
ただしアップル、オレンジジュース、コーラは置いてある。
閉店間際だったので、行列はしていなかったが、普段は待ち行列。
食べている間にも常連さんが見えて、貝焼きを注文した。どうやら名物のようだ。
続いて持ち帰りの若い人もやって来た。三代、四代と通うお客さんも多い。
ハルナの一日は今日も忙しく暮れる。
ごちそうさまでした。
「筆者注」
切り絵作家・成田一徹氏の「神戸の残り香」にハルナと「ばら食品のソース」が登場している。
広島焼きと神戸焼きの考察については「ここ」を参照。