武塙麻衣子さんの『酒場の君2』を読む

注文していた武塙麻衣子さんの『酒場の君2』が発売日の3月18日に届いた。

武塙麻衣子さんのことを知ったのは、いつのことだったか記憶にないが、気が付けば有り難いことに✖(旧twitter)で相互フォローになっていた。

武塙麻衣子さんの作品を読むのはWEB掲載記事を除いては、今回が初めてになります。
届いた『酒場の君2』はサイン入りですね。
願わくば、いつかこの本に私の名前も入れて欲しい(笑)

『酒場の君2』には、お店の外観や内観、そしておススメのメニューの写真あるいはイラストが掲載になっているとの予想は見事に外れたのであります。

文字だけの純粋なエッセイ集になっておりました。

自慢でも何でもありませんが、大都市東京で暮らしたこともありまして、本書で唯一名前がわかっております「秋田屋」の記事を拝見しました。

そこには秋田屋にたどり着くまでの道中のことが書いたあったり、店の店員さんとのやり取りがあったり、注文した「にこみ」のことに触れたりと、特別なことは何もない普通の文章が綴られています。
ふらっと訪れて、その時々の印象を綴っておられるわけです。特別な脚色があるわけではなく、本当に素直に書いておられるのが、いいと思うのです。私はこの普通がいいと思うわけです。

よくある名作を映像化すると陳腐なものになってしまいますよね。そこは読者がそれぞれに想像を膨らませればいいのです。

東京暮らしでは、自由が丘の近くの大岡山商店街の路地裏に住んでいました。本書には自由が丘の「ほさかや」の記事が収められています。私がいたころには存在しなかった店であろうことは容易にわかります。

この項では、

すみません、連れがあと二、三分で着きます。
店員さんは嫌な顔一つせずコの字カウンターの一番奥に一人分空けて隣に私を座らせてくれた

などと活写しているのである。

前に、特別なことは何もない普通の文章が綴られていると書きましたけれど、この生き生きとした描写(店であったり、店員さんであったり、お客さんであったり、肴であったり)こそ、本書の魅力ではないかと私は思うわけです。

本書には19編が収められています。
たった二編を読んだだけでもう、東京でなくとも神戸の(三宮ではなく)元町か新開地のあの店の暖簾を潜りたくなってきましたね。